活動日誌−伊藤けんじ

【20.12.13】東京調布で陥没事故。シールド工事は安全ではない。リニア工事も不測の事態への備えを。(12月議会一般質問)

外環道の工事で住宅街が陥没

 2020年10月18日東京都調布市の住宅街で、最大幅約5メートル、深さ5メートルの巨大な陥没が生じました。この陥没カ所の真下では、東京外かく環状道路のトンネル工事がシールド工法にて行われており、一か月前にシールドマシンが通過したばかりでした。

 異変は8月中旬から生じ始めたとのこと。細かい振動を家の中で感じ、気のせいかと思ってテーブルのペットボトルを見たら水面が揺れていた。毎日続く振動と騒音に悩まされた。低周波も発生しているのか、『家の中にいると気持ちが悪くなる』と言って外に出る住民の方もいたとのこと。家がきしんだ。住宅の塀にひびが入った。外階段に数メートルの大きな亀裂が入った。タイルの剥落。コンクリートの隆起。水道管の水漏れ。ガレージがゆがんでシャッターが閉まらなくなった。などの実被害も出ています。また、振動によって起きたと思われる液状化により、舗装の継ぎ目などから砂が噴出した痕跡も見つかっています。

 陥没事故発生後、緊急に周辺の地下を調査したところ、地中にトンネル状の巨大な空洞が、二つ存在していることが確認されました。一つは地表から5メートルの深さに、空洞の厚さ3メートル、幅4メートル長さ30メートル。もう一つは、約4メートルの深さに、厚さ4メートル幅3メートル長さ27メートル。発見された空洞は直ちに充てん工事が実施されました。その後の調査で、これはシールド工事によるものだということが明らかになっています。

家屋調査、亜炭鉱の空洞の調査が必要。区分地上権の設定もすべき。

 東京外かく環状道路の工事に当たっては、ルート上の家屋調査を実施しています。平成27年の住民向けQ&Aでは、シールド工法は地上には影響しないが、万が一の時のこともあるので、念のため家屋調査をするのだと説明されています。今回、その「万が一」が起きました。

 対して、リニア工事においては、非常口周辺の家屋調査をしたのみで、ルート直上の家屋調査はしていません。他所の同様の工事で、「万が一」が起きたのであれば、それはもう、起こりうるものとして想定すべきものであり、ルート直上の家屋調査が必要です。

 亜炭鉱の調査も必要です。リニアルート上の出川町、不二ガ丘、松本町、東神明町はかつて亜炭鉱が掘られていた場所で、地下には間違いなく空洞があります。JRが事前に行った亜炭鉱の調査は、文献調査とわずかなボーリング調査にとどまっており、空洞の詳細な調査は行われていません。東京外環道工事の現場で発見された地下空洞が、工事によるものか、もともとあったものかにかかわらず、シールド工事の影響を受けることも明らかになりました。亜炭鉱の空洞の詳細な調査をすべきです。

 また、区分地上権。坂下4丁目より東京方面においては、大深度地下法の適用外であるにも関わらず、区分地上権の設定がなされないまま工事が進められています。「土地の所有権は、その土地の上下に及ぶ。」とした民法207条の明確な違反行為です。シールド工法によるトンネル工事の安全神話が崩壊したいま、改めて、区分地上権の設定の必要性が浮き彫りになりました。

 これらを市が事業者に求めるよう求めました。市は「JR東海に対し,シールドトンネル工事に伴う環境測定の実施、市民の皆様へ丁寧な説明及び工事中の安全対策について、市民の不安が解消されるよう要請している」と答弁しました。

西尾非常口の工事は、美濃帯に到達していた

 JR東海は、2020年8月に「令和元年度における環境調査の結果等について」を公表しました。その中の西尾非常口の発生土について、酸性化可能性試験結果の月別最小値が示されており、令和元年11月より、ペーハーの数値が大きく下がり、長期的な酸性化の可能性があると評価される3.5を下回っています。

 これは硫化鉱物が含まれ、時間とともに分解され硫酸を生成し、酸性化する土壌であるということです。これにより酸性水が発生し、さらにカドミウムなどの重金属による環境汚染を引き起こす原因となります。美濃帯と呼ばれる岩盤層を掘削して生ずると思われる問題は、まさにこの点であり、一年も前からこのような土壌が出ていたことについて、周辺への影響も心配されます。

 答弁は「酸性化の可能性がある土壌につきましては,事業者からの報告によると令和元年11月から発生しており,本年10月までの発生量は6,490立方メートルで,汚染土壌全体の約3分の1となっております。 事業者は,西尾工区のトンネル工事から発生した土壌に黄鉄鉱が含まれやすいこと,その酸化により重金属等が溶出する可能性があることをトンネル工事説明会で説明しております。そのため,事業者は,酸性化可能性試験を実施し,発生土の性状を確認の上,適切に処分しているもので,市は,事業者からの報告により問題ないものと認識しております」とのことでした。

 引き続き、注視していきたいと思います。

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