活動日誌−伊藤けんじ

【17.09.25】市民農園、法的にも問題あり 9月議会一般質問

市街化調整区域に、都市計画公園

 新型市民農園は、都市公園として整備する方針が示されました。

 新型市民農園は当初、市民農園整備促進法に基づいて整備する方針でしたが、事業内容からその認可を受けることが難しいことから、方針転換をし「都市公園」としての整備をするとのことです。

 そのために都市計画決定の手続きが進められていますが、都市計画法、都市計画マスタープランを都合良く解釈して、強引に行われており、法的見地からも道理のないものです。

 優良な農用地をつぶして、市民から求められてもいない公園を、多額のお金をつぎ込んでまで実施すべきでないことは明らかです。

議事の概要

◆23番(伊藤建治君) 続いての質問事項,新型市民農園についてです。
 新型市民農園計画については,私は,昨年12月議会において痛烈な反対討論をしました。予定地は圃場整備が行われた優良な農用地であり,農地としての活用がしっかりとなされており休耕地は少ないこと。10億円以上の整備費用がかかり,数千万円の単位で維持管理経費が必要となるのに対し,想定利用人数は少なく経済的な合理性はないこと。また,立地条件から,そもそもが利用ニーズの想定も甘いのではないかという指摘をしました。その後,私の反対討論に対し多くの共感の声が寄せられました。地元で開催された説明会でも多くの疑問の声が上がったと伺っています。

 市の行う事業にここまで不協和音,疑問の声が聞こえてくることは,ここ10年の間ではなかったと思います。改めて,この計画は思いとどまることが賢明であると確信しております。今回,それに沿った答弁が出てくることは期待しておりませんが,計画の矛盾,問題点は明らかにしたいと思います。

 まず,(1)計画の内容についてです。
 市民農園を,都市公園として都市計画決定をして整備をするとのこと。

 都市計画法は,第1条「都市の健全な発展と秩序ある整備を図り,もって国土の均衡ある発展と公共の福祉の増進に寄与することを目的とする」,第2条「農林漁業との健全な調和を図りつつ」中略「適正な制限のもとに土地の合理的な利用が図られるべきことを基本理念として定める」とあります。

 同法18条の2には,市町村が行う都市計画決定についての方針が定められており,「都市計画区域の整備,開発及び保全の方針に即し」とあります。春日井市でいえば,それは都市計画マスタープランです。都市計画マスタープランにおいては,この西尾町の予定地は色がついていない箇所であり,現状維持することになっています。保全の方針に即すという観点からすれば,今回の市民農園予定地は保全優先順位1位の農地である農用地です。

 先日まで実施されておりました都市計画案の縦覧で示されていた理由書に書かれていたものは,およそ理由として合理性のあるものではありませんでした。

 尾張都市計画区域マスタープラン,第五次春日井市総合計画,春日井市都市計画マスタープランの3つの計画からの位置づけが列挙されていましたが,尾張都市マスと第五次総合計画からの引用は,主に市街化区域の住宅地を想定した記述を引用していました。春日井市の都市マスからは,まとまった農地で遊休化しつつある地域についての記載を用いていました。いずれも今回の西尾町の予定地には当てはまりません。

 ことし第1回の定例議会における代表質問への答弁では,農園を整備するには何ら変わらない中で,飲食店や直売所が設置できる,国の交付金も要件を満たすからという理由で,都市公園としての整備の考えが示されました。

 1年前の代表質問では,市民農園整備促進法に基づく市民農園区域として指定すると答弁されていましたので,1年間で全く違う内容に方向修正がなされました。整備した後の使い勝手がいいからという安直な考えで都市計画決定を用いるべきではありません。

 都市計画法の保全の方針や都市計画マスタープランとの整合性は図れていません。都市計画公園として整備されるとなると,都市計画税も充当が可能になります。税の公平性の観点からも合理性に欠きます。この場所に都市計画公園が必要となり得る合理的,明確な理由について説明が必要です。答弁を願います。

 6月,8月の閉会中の委員会で示された具体的な計画図面は,当初示されていたものから大きく変わりました。当初,200区画と計画されていた貸し農園は,わずかに70区画。栽培指導付き農園は農業体験農園と名前を変え,こちらは100区画の計画であったものが,ほぼ計画どおりの120区画。合わせて190区画です。

 利用ニーズなどを勘案して大幅に区画数を減らしたものだと思われますが,区画数の変更についての理由。そして,これによって利用人数想定などが変わると思いますが,その見通し。さらに,収穫体験農園の運営の仕方,何を栽培して,誰が収穫をするのか。その利用想定人数について。これら詳細な説明を求めます。ここまでが(1)です。

 新型市民農園整備についての住民説明会が実施されております。実にさまざまな御意見が出たと伺っていますが,どのようなものが出されたのかお伺いいたします。これが(2)。
 そして,(3)今後の進め方です。都市計画案の縦覧が9月5日から9月19日まで実施されましたが,その後の流れについての説明を願います。以上,壇上からの質問といたします。


◎産業部長(石黒直樹君) 私からは,6,新型市民農園について3点の御質問に順次お答えいたします。

 初めに,新型市民農園の整備に係る春日井市都市計画マスタープランとの整合につきましては,同プランの北部地域のテーマ別方針に,「まとまった農地で遊休化しつつある地域については,農業体験を通じた市民のふれあいの場となる体験型の都市型市民農園としての活用について検討し,その保全に努めます。」と位置づけられております。

 次に,貸し農園と農業体験農園の区画数につきましては,他自治体の農園の事例を参考にするとともに,安心して農作物の栽培が楽しめること,交流が広がることなどを考慮し設定いたしました。今後は,8月に実施したサウンディング型市場調査により,民間事業者からの提案や意見を参考にしながら,より多くの来園者が楽しむことができるよう,区画数について柔軟に検討してまいりたいと考えております。

 また,収穫体験農園の運営方法につきましては,できる限り地元農家の協力をいただきながら野菜や果樹を栽培し,農に余りなじみの方でも気軽に農体験をすることができる農園として整備してまいります。なお,それぞれの利用人数については,今後事業を進める中で設定してまいります。

 次に,説明会につきましては,昨年12月に新型市民農園の整備内容について,また,本年6月に都市公園としての整備に係る手続や事業の進捗状況について開催いたしました。説明会では,主に交通量増加に伴う交通安全対策,西尾小学校児童の通学時間と農園の開園時間の兼ね合い,バーベキュースペース設置に伴う飲酒の可否などついてのほか,環境や治安の悪化が懸念されるなどの意見もございました。なお,交通安全対策については,警察を初め,学校,PTA,区・自治会などと協議を進めており,農園の開園時間や飲酒などにつきましても他自治体の事例を参考にしながら検討しているところでございます。

 次に,今後の進め方につきましては,現在,造成と建築物の実施設計を進めており,来年度の用地取得に向けて事業用地の土地鑑定評価や農業用倉庫などの補償額調査を実施しているところでございます。そして,都市計画の手続につきましては,今月5日から19日までの間,尾張都市計画公園の変更案の縦覧を行い,10月に開催されます春日井市都市計画審議会に諮ります。その後,愛知県との協議を進め,告示をした後に,県に事業認可申請を行う予定としております。なお,来年度は事業用地を取得して造成及び建築工事に着手し,平成31年度中に開園する予定でございます。

◆23番(伊藤建治君)  都市計画法や都市計画マスタープランとは整合性がとれていないと言わざるを得ません。

 西尾町の予定地は,答弁で述べられた,まとまった農地で遊休化しつつある地域ではありません。当初に予定していた市民農園整備促進法による整備は,この適用についてもいろいろ条件がありますから,私は市民農園区域の指定も難しいだろうと思っておりました。

 そもそもこの場所に市民農園というのが無理があります。だから,都市計画決定をするというのは禁じ手,裏わざといいますか,都市計画法の想定の網の目をくぐるものです。ここについての議論は今後もかみ合わないと思いますけれども,道理はないということは指摘しておきたいと思います。

 そして,計画の内容については,今後の運営形態についてお伺いしたいと思います。利用人数,諸経費から見れば採算性の合うものではありません。公共事業は必ずしも採算性が合わなくてもよいと思いますけれども,それは公共性であるとか福祉であるとか明確な理由が必要です。採算度外視の公共性のある施設として位置づけるのか,あるいはレジャー施設として収益をしっかり確保して民間による自立を目指すのか,そのコンセプトを伺います。


◎産業部長(石黒直樹君) 計画の内容について2回目の御質問にお答えいたします。
 管理運営形態につきましては,民間事業者からの提案や意見を参考にしながら事業計画案の作成を進めております。その事業計画を踏まえ,利用者の多様なニーズに柔軟に応えられるよう,指定管理者制度など,より効果的で最適な管理運営形態を検討してまいります。

◆23番(伊藤建治君) 今の答弁は,つまりコンセプト自体がまだ明確になっていないということです。

 区画数の変更についてニーズ調査が行われたという形跡もないし,どういう位置づけでの施設であるのかというコンセプトすら決まっていない。計画先にありきという印象をますます強く持ちました。

 コンセプトという点では,利用者の想定はもう少しお伺いいたします。夏の野良仕事は毎日草引きをしたり収穫したりと手間暇がかかるものです。自分の生活圏の中でなければなかなかできないものでございまして,だから200区画を70区画まで減らしたんだと思うんですけれども,利用者の想定について,どの範囲の人たちが,どういう交通手段でお越しになることを想定しているのかお伺いいたします。


◎産業部長(石黒直樹君) 計画の内容について3回目の御質問にお答えいたします。
 利用対象者につきましては,春日井市内にお住まいの方を初めとして,近隣地域からの来園も想定しており,幅広い世代の方々が対象となります。その中でも,野菜づくりや食育に興味のある家族連れや,退職後の趣味や健康づくり,生きがいとして野菜づくりに励みたい高齢者などの方を考えております。

 また,農園への交通手段につきましては,施設の北側の国道19号や南側の県道を利用することにより,市の中・西部地域からも自動車で容易にアクセスができるため,主に自動車による来園のほか,路線バスなどによる来園を考えております。

◆23番(伊藤建治君) 説明会で出されている意見についてでございますけれども,説明会で意見を言われる方は否定的な方が多い傾向があるのかもしれませんけれども,それを差し引いても,この事業を前向きに評価して歓迎している声が非常に少なかったというのが印象的であります。

 周辺環境が変わることへの不安だけでなく,市街化区域に近い場所で行うべきであるとか,まとまった休耕地でもない場所に巨額な市民のお金を使うことに対する強い疑問の声などもたくさん出ております。これら出されている意見をしっかりと受けとめなければならないと思います。

 それを踏まえまして,(3)の2回目,今後の進め方についてでございます。市民農園について,当事者以外の方から,この事業がいいとか評価する声はほとんど聞こえてきません。私のように問題だと感じながら,なかなかそうとは言えない人がたくさんいます。あるいは,嘲笑しているような声もたくさん聞こえてきます。

 春日井市が負うべき負債であるとか都市計画の理念を壊すという罪の深さから見れば,いま一度立ちどまる必要性を強く感じます。

 年内に都市計画決定の決定告示がなされるということでございますが,都市計画決定をしても,直ちに事業化が迫られる性質のものではないと私は理解しております。都市計画決定から何十年も事業化されずにそのままのものもたくさんありますので。

 ですから,もし仮に,やっぱりこの計画はやめようよとか,もっと計画を練り直そうよということになった場合,今回,都市計画決定をしても,事業化の先送りであるとか,当面は事業化をしないということはあり得るのかどうかという技術的な点を最後にお伺いいたします。これは当局側のやるやらないという意思ではなくて,技術的な点をお伺いいたします。


◎産業部長(石黒直樹君) 今後の進め方について,2回目の御質問にお答えいたします。
 新型市民農園は,平成31年度の開園を目指して事業を進めており,事業化しないことについては考えておりません。

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