活動日誌−伊藤けんじ

【17.03.09】朝宮公園のプール解体費用を、なぜ春日井市が負担? 3月議会

壊れて使えないプールを行政財産として取得し、解体費用は春日井市が?

 2月の閉会中の総務委員会では、朝宮公園の整備構想についての報告がありました。県営の朝宮公園を、春日井市が土地については無償貸与、公園設備については譲渡を受け、公園の管理運営を春日井市が移管を受け、そして、陸上競技場などの建設など、大掛かりな再整備を実施するという計画です。

 公共施設の移管する際には、もともとの管理者(今回で言えば県)が、補修や再整備をしたうえで、次の管理者に手渡すというのが通常の手続きです。現在愛知県は、第六次行政改革に基づいて、県営の公園を市町村に移管する作業も進めていますが、朝宮公園以外の全てにおいて、適切な対応がされています。朝宮公園だけは、現状のままの移管で、再整備に係る費用は春日井市が負担することになっています。

 さらに、移管時期についても、再整備を実施する計画より2年も前倒しでの移管受け入れ。これによって、公園は現状のままで、維持管理費用だけが春日井市の負担になります。年間6000万円ほどの維持管理費用ですから、移管前倒しにより、本来負担しなくてもいい1億2000万円ほどの維持管理費用を負担しなければならなくなってしまいました。

 朝宮公園には、壊れてしまって10年ほども使っていないプールがあります。陸上競技場を整備するにあたって、プールを解体する必要がありますが、その費用約2億5000万円も春日井市が負担するとの報告がなされました。

 「解体費用を市が出す」にあたっては、その施設が「春日井市のもの」であるという前提が必要です。そのため、「壊れて使えないプール」を「行政財産」として「取得する」のだという説明が、2月の総務委員会の私の質問に対してなされました。

 「壊れて使えないプール」を「行政財産」として「取得」し、一度も使わないまま(使えないので当然ですが)壊す。結果、2億5000万円の費用負担が生じるのですから、一連の行為は背任に近いのではないか。地方自治法、地方財政法の観点からしても大いに問題があるのではないかと指摘をしました。

 「行政財産」としてではなく「普通財産」として受け入れると、答弁の修正がなされました。そして、最終的に陸上競技場も含む大きな公園施設が整備できるという全体の利益の中では、認められる範囲だと答弁がされましたが、本来負担しなくてもいい費用であり、今後も県との交渉を進めるよう強く求めました。

議事の概要

◆23番(伊藤建治君) 朝宮公園の移管に伴うプールの解体費についてお伺いをいたします。
 2月2日の閉会中の総務委員会で,朝宮公園の整備構想についての報告を受けました。その際,プールの取り扱いについてもやりとりをいたしましたが,不明な点が残ったままでしたし,これは市の財政負担にも直結する話でございますので,今回,一般質問を行います。
 プールを取り壊す費用は春日井市が負担するとの説明を受けてきました。その費用を負担するに当たっては根拠が必要でございます。すなわち市の財産として取得をしなければ,取り壊し費用も負担できないであろうと思いましたので,その取り扱いをお聞きしましたところ,行政財産として受けるとの答弁がありました。行政財産は地方自治法では次のように書かれています。「行政財産とは,普通地方公共団体において公用又は公共用に供し,又は供することと決定した財産をいい,云々」でございます。そして,地方財政法の第8条にはこう書かれています。「地方公共団体の財産は,常に良好の状態においてこれを管理し,その所有の目的に応じて最も効率的に,これを運用しなければならない。」
 朝宮公園のプールは既に使っていないものですし,50メートルプールに至っては壊れていて使えないものでございます。しかも,朝宮公園整備構想の10ページには,「プール施設が老朽化していることから廃止・解体します」と書いてございます。行政財産として取得をしたものを所有の目的に応じて運用せず,公用または公共用に供さないまま取り壊す,そして取り壊すに当たっては,その費用をもともとの所有者の愛知県ではなく春日井市が負担をする,使えないもの,使う見込みのないものを財産取得し,結果として2億5,000万円もの費用負担が生ずるといったほうがよいかもしれません。不要な財産取得をして,結果,費用負担が生ずることについては,住民監査請求をされてもおかしくない行為なのではないかと思います。2億5,000万円といえば大金でございます。保育園の建てかえが1つできてしまうぐらいの金額でございます。これほどのお金が,使うことのできないプールを取得することによって負担しなければならないということは看過できないものでございます。
 そこで,以下3点についてお伺いをいたします。
 (1)他市の同様事例について。
 愛知県から公園施設の移管を受ける自治体が春日井市以外にもございます。県内他市において移管に伴う手続,とりわけ古くなった既存施設の取り壊しや補修といったことはどのように取り扱われているのかお伺いをいたします。
 (2)行政財産として受け入れることについて。
 使う見込みのないもの,使うことができないものを行政財産として取得する行為は,地方自治法あるいは地方財政法の趣旨からの逸脱行為で適切ではありません。これについてどういう見解をお持ちか答弁を願います。
 (3)解体費を市が負担することについて。
 一連のことで何が問題かといえば,2億5,000万円もの解体費の負担が生ずることにほかなりません。これは先ほど述べた法の趣旨に照らしても春日井市が負担する必要のないものでございます。県が適切に負担すべきものと考えますが,当局のお考えをお伺いいたします。

◎企画政策部長(前川広君) 私からは,朝宮公園の移管に伴うプール解体費について,3点の御質問に順次お答えをいたします。
 初めに,他市の同様事例についてでございますが,朝宮公園の移管につきましては,同公園の有効活用について愛知県と話し合いをする中で本市への移管が協議されたものであり,同様の事例ではございませんが,公園の移管という点では,愛知県の第六次行政改革の取り組みで進められた名古屋市と岡崎市の事例がございます。名古屋市につきましては,老朽化のため危険なフェンスやベンチなどを県の負担により撤去し,トイレを現状のまま引き受け,市が公園再整備時に市の負担により取り壊す予定であると聞いております。
 また,岡崎市につきましては,県の負担によりプール,管理棟及び電気給排水設備を撤去することとし,市の負担により運動場再整備を行う予定であると聞いております。
 2点目の行政財産として受け入れることについてでございますが,法的な問題の有無についてでございますが,前回の総務委員会において委員からの御質問に対し,使用予定のないプールも含めて公園施設を行政財産として移管する旨を回答いたしましたが,使用予定のないプールの施設につきましては普通財産,プールに付随する管理棟とその他公園施設につきましては行政財産として取り扱うことが適当であると考えております。
 使用予定のない施設を財産として受け入れる件につきましては,市の中心部において多目的総合運動広場の整備に必要な規模の土地を取得することが難しい中で,譲り受ける施設及び無償貸与の土地を活用した市独自の取り組みを展開できることは,一部休止中のプールの施設を市が公園の再整備に合わせて解体することとしても全体としての利益にかなうものであり,公益に資するものと考えております。
 3点目の解体費を市が負担することについてでございますが,プールの解体については,愛知県との話し合いをする中で,本市への公園全体の移管が協議されてきたことを踏まえまして,移管の時期を平成29年4月とするとともに,本年2月に策定しました朝宮公園整備構想に基づきまして,多目的総合運動広場やテニスコート,子供たちの遊具などの配置や規模,仕様を初め,概算工事費や整備スケジュール,公園全体の運営方法などを平成29年度策定の基本計画において具体化した後に,プールの解体も含めて市独自の取り組みを展開することとしております。こうしたことから,プールの解体につきましては,移管を受けた後に本市が解体するものでございます。

◆23番(伊藤建治君) 県内他市の移管の状況について答弁をいただきました。名古屋市については,これは熱田区の高蔵公園のことかと思います。老朽化して危険な設備は県の負担により撤去する,トイレは現状使えますので,現状のまま移管を受けて,再整備をする際にはその更新を新たな管理者であります名古屋市が行うという内容。岡崎については,岡崎総合運動場のことでございます。プール,管理棟,電気給排水設備の撤去は県が負担をすると。その後の再整備は岡崎市が行うという内容でございます。いずれも移管に伴う手続としては,常識的な取り扱いがなされているかなというふうに思いますが,春日井市のこの移管の条件と比較をいたしますと,余りにも内容が異なるわけでございますが,どうしてここまで条件が違うものかというふうに思うところでございます。答弁をお願いしたいと思います。

◎企画政策部長(前川広君) 他市の同様事例についての2回目の御質問にお答えいたします。
 他市の移管の事例につきましては,愛知県第六次行革大綱に基づき,県所有の公共施設を整理する中での地元移管であり,愛知県と公園の有効活用の話し合いの中で移管が協議されました本市の状況とは異なるものでございます。

◆23番(伊藤建治君) (1)の3回目です。名古屋市と岡崎市の移管については,愛知県の第六次行政改革で列挙されて行うもので,朝宮公園は前提が違うという答弁かと思います。しかし,県の施設の移管を受けるという点では,行為自体は同じ性質の事柄でありまして,伴う手続についても同様に取り扱っていただいてしかるべきかなというふうに思います。
 愛知県の側から見れば,行革の計画以上に身軽になれるわけでございますから,愛知県にとってもありがたい話じゃなかったかなと思うところでございます。
 事前交渉の際には,こうしたことも考慮しながら,具体的には第六次行政改革で進めている移管と同じ取り扱いにしてほしいという立場で交渉に臨んだものかどうか,あるいはそうした部分は調整や把握しないまま交渉を進めたかどうかという点,答弁をお願いしたいと思います。

◎企画政策部長(前川広君) 他市の同様事例についての3回目の御質問にお答えいたします。
 愛知県に対しましては,従来,老朽化して稼働していないプールの廃止も含め,多目的に利用できる広場の設置を要望してまいりましたが,県においては整備する方針がなく,本市による独自の整備について提案を受けました。その後,本市において多目的総合運動広場の設置も含めた公園全体の有効活用について検討を行い,朝宮公園全体の移管を受け,本市独自の取り組みを行うこととし,愛知県との協議において現状のままでの施設の無償譲渡,土地の無償貸与を条件として移管を受けることとしたものでございます。
 また,愛知県における他の公園に係る行政改革の取り組みについては承知しておりましたが,朝宮公園についてはその対象ではなく,他市の事例のような移管条件については協議内容にしておりません。

◆23番(伊藤建治君) (2)の2回目でございます。
 行政財産として受け入れることについてでございます。使用予定のないプールは普通財産,プールに付随する管理棟とその他公園施設は行政財産として取り扱うという答弁がありました。委員会での答弁の内容の修正が行われたものと受けとめました。ただ,行政財産であっても,普通財産であっても,取得してもただ壊すだけというのは,やはり適切ではないかと思うところでございます。普通財産というのは,行政財産以外の財産全てを指すものでございますけれども,主として経済的価値の発揮を目的としておりまして,経済的価値を保全発揮することによって間接的に市の行政に貢献させるため,管理・処分されるべき性質のものとされております。朝宮公園のプールは経済的価値の発揮といいましても,取り壊すしか道がなく,2億5,000万円もの経済的負荷しかないわけでございますので,この取得をするという行為は適切ではないかと思います。ですが,こういうものは通常は,移管元がきれいにしてから引き渡すという手続をとっているわけでございます。先ほどの答弁で,全体としての利益にかなうものであり,公益に資するとございました。つまり今回のプールの解体費用負担につきましても,一連の整備のかかる必要経費として包括的に受け入れるということだと思います。
 例えば民間同士の契約上であれば,土地の上に使えない建物がのっているけれども,これはそっちで何とかしてよという話し合いはある話だと思うんですが,今回は県と市,公と公の間で行われるものでございます。全体という包括的な話だけでなく,それぞれの行為に法的根拠,合理性が求められるべきものでございます。ましてや普通財産とはいっても,一旦は財産台帳に記載をして,その後滅失をするという行為を行うわけでございます。ですから,この点だけを切り取れば,地方自治法あるいは地方財政法の趣旨には合致をいたしません。公園整備を行うために多少の不合理は飲み込むという,いわば,なあなあな行為というのが適切かどうなのかという,この点,御所見をお伺いしたいと思います。

◎企画政策部長(前川広君) 行政財産として受け入れることについての2回目の御質問にお答えいたします。
 解体予定のプールの移管に対する法的な問題についてでございますが,先ほどお答えした内容のとおり全体としての利益にかなうものであると考えております。
 また,既存の施設の解体につきましては,今後策定する基本計画において具体化するものであり,プールも含めて他の施設においても解体するものが出てくるものと考えておりますので,公園全体の移管を受ける中で本市が取り組むことが必要であると考えております。

◆23番(伊藤建治君) (2)の3回目です。全体の利益ということでございます。つまり不可避の手続だという答弁かと思いますが,ただ,この部分だけを切り取れば,これはだめです。そこは当局におかれても御承知のことと思います。なので全体の利益という言葉を繰り返しお使いになられているかと思います。ですから,包括的に取り扱うということについても,一点の曇りなしというものではなくグレーな状態であろうかと思います。ここは法的な観点からの精査をもう少しきちんと行うべきかなというふうに思います。
 それを踏まえまして,(3)の2回目でございますけれども,解体費を市が負担することについてでございます。これまでのやりとりを踏まえましても,プールの解体費を春日井市が負担することは適切ではないというふうに思います。仮にこのまま普通財産として受け入れてしまったとしても,公園整備に市が取り組むとしても,かかるプールの取り壊し経費については,県に御負担いただくべきものとして交渉すべきだと思うんですが,いかがでしょうか,答弁願います。

◎企画政策部長(前川広君) 解体費を市が負担することについての2回目の御質問にお答えいたします。
 プールを解体することにつきましては,先ほどもお答えしましたが,朝宮公園全体の移管を受けて,多目的総合運動広場を整備する一環であると考えております。したがいまして,朝宮公園の移管に関する愛知県との契約においては,施設については無償譲渡,土地については無償貸与を条件とし,朝宮公園全体を包含した協議を今後も進めてまいります。

◆23番(伊藤建治君) (3)の3回目です。これで最後になります。
 2億5,000万円という解体費,非常に大金でございまして,しかも負担しなくてもいいもの,負担すべきでないもの,愛知県が持つべきものと思っております。それが筋論だと思います。それを極めて不合理な内容の条件で受け入れるということになってしまった,そこの経緯についてはしっかりと検証してもらいたいと思いますし,法的にはグレーを含んでおりますので,ここはクリアにする努力をしてほしいと思います。そのことが市民利益に直結をするわけでございます。
 今回私は,2億5,000万円の費用負担の筋論から財産取得についての論陣を張りましたけれども,一番の論点というのは,解体費用を適切に県が負担してほしいという趣旨でございます。そして,さっき気になる答弁がありました。他の施設においても解体するものが出てくると思われるとおっしゃられたんですけれども,これはますます筋を通しておく必要性があろうかと思います。本来負担しなくていい経費は負担しなくてもいいと私は思います。今回,私は,愛知県との交渉の糸口になるべき問題提起をしたつもりでございます。着想の出発点は,余りに一方的な移管条件が何とかならないものか,何か県との交渉材料がないものかという思いでございます。考えに考えておりましたら,法的にグレーな部分が出てきましたので,前回の委員会と,それから今回の一般質問でやりとりをさせていただいたものでございます。
 しかし,答弁をお聞きしておりますと,これまでの経緯から仕方がないとあきらめてしまって思考停止になっているように思います。法の観点など,さまざまな視点からもう一回再点検を行っていただいて,糸口を探していただいて,愛知県との費用負担についての交渉をしていただきたいと思います。愛知県は財政力全国第2位なんです。ですから,こういうところへの支出をしっかりとさせるべきだということは申し上げておきたいと思います。

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