活動日誌−伊藤けんじ

【16.09.26】無料塾の取り組みを(子どもの貧困対策、学習支援事業) −9月議会一般質問

子どもの貧困率は16.3%と過去最悪

 2012年に厚生労働省が行った国民基礎調査では、子どもの貧困率は16.3%と過去最悪の数字を示しました。6人に1人が貧困状態にあることを示しています。

貧困に起因する不安定な生活環境では、子どもの時代に家庭で身に着けるべき「必要なスキル」が身につかず、その後の人生にも影響し、その子もまた貧困状態になるという「貧困の連鎖」を引き起こしていきます。特に、「充分な学力が身についていない」ことは、進学や就労選択においては不利な要件となってきます。生活保護世帯の4割(25.1%)は、子どものころ育ってきた家庭もまた生活保護経験もっているという、生活保護における貧困の連鎖も確認されています。

 義務教育課程においては、誰もが同じように学校で学んでいるのでは、と思いがちですが、学力は学校の授業を受けるだけでは身につきません。家での学習が必要不可欠です。親が生活を維持するのに必死で、家庭を顧みることができず、家の中に勉強する場所がない、勉強する習慣が身につかないということが、学力の低下につながっていきます。

貧困の連鎖を断ち切る

 2013年(平成25年)に生活困窮者自立支援法が成立し、2015年(平成27年)に生活困窮者自立支援事業が国の制度としてスタートしました。これは「現在は生活保護を受給していないが、生活保護に至るおそれがある人で、自立が見込まれる人」を対象に、困りごとにかかわる相談に応じ、安定した生活に向けて仕事や住まい、子どもの学習などさまざまな面で支援するものです。春日井市も必須事業の「自立相談支援事業」と「住居確保給付金」に取り組んでいます。

 生活困窮者自立支援事業の任意事業の中に、貧困の連鎖を断ち切るための事業「生活困窮世帯の子どもの学習支援」があります。学習支援事業に取り組む自治体は全国の300自治体、33%に上り、愛知県内では、名古屋市、豊田市、岡崎市、豊橋市など、19市に上ります。

公的な「無料塾」多くの自治体で実施

 私は、学習支援事業を実施している名古屋市の事業所に視察に伺い、現場の様子を拝見し、制度や事業の沿革を教えていただきました。

 名古屋市は制度に先んじて、2014年(平成26年)から貧困家庭の学習支援事業を実施しています。2014年、2015年はモデル事業として。そして、今年度2016年度からは全市的な事業として展開。現在、市内16区68か所で学習支援事業が実施されています。ここまで、制度名である「学習支援事業」と述べてきましたが、イメージが伝わりにくいので、以後「無料塾」と呼びます。

 名古屋市の無料塾は、中学生を対象にした事業で、ひとり親家庭、生活保護世帯、生活困窮世帯のいずれかの世帯に属していることが要件です。

 市内68カ所で開催されている無料塾は、いずれも委託事業となっており、受託者は社会福祉協議会、NPO法人、児童館の指定管理者、医療生協、個別指導学習塾など、多彩です。

 無料塾の定員はいずれも12人。運営事業者からは、待機児童もいるんじゃないかとのお話も伺いました。

 無料塾は、週2回開催のAタイプ、1回開催のBタイプに分かれ、市内の児童館や公民館、コミュニティセンターなどで実施。私が視察した「あじま教室」は、診療所2階のフリースペースで実施していました。

 午後6時になると、子どもたちが集まってきます。その日「あじま教室」には、学習サポーター、この方が勉強を教える人ですが、7人いらっしゃいました。子どもも、野外学習や部活などで、なかなか全員は揃わないとのことで、その日は7人の子ども。マンツーマンの指導となっていました。名古屋市の枠組みとしては、学習サポーター1人に対して、子どもは3人までとのことです。

 途中、塾が用意したごはんとお味噌汁での食事休憩をはさんで、夜8時まで、熱心な勉強とサポートが続いていました。

 複雑な家庭環境の子、片親が外国人の子、様々な事情を抱え、学校にうまくなじめていなかったり、不登校の子もいるとのことでしたが、2時間の間、誰も集中力を切らすことなく、サポートをしてもらいながらもくもくと勉強している姿が印象的でした。事業の責任者の方は、「勉強して学力を身に着けることも大事なんだけれど、子どもの居場所になっている。安心して来られる居心地の良い場所にしたいと思っているんです」と語っていました。別の学習サポーターの方は「週2回では、充分に見てやれないんだけど、ここに来て、集中力が身に付いたり、勉強する習慣が身に付くなど、子どもたちは成長している、こういう場が、もっと必要なんじゃないか」とおっしゃっていました。

 あじま教室の学習サポーターは、5人が教員OBなどの年配者、2人が学生ボランティアで構成されていました。勉強を教える大人たちもまた、生き生きと熱意をもって取り組んでいる姿もまた印象的でした。

 名古屋市の無料塾、学習支援事業は、学習サポーターの人件費、時給換算で1000円程度や、場所代、光熱水費、指導に必要な教材の経費などをこみこみで、事業者と委託契約を結んでいますが、これは、大本(おおもと)は、国の生活困窮者自立支援事業ですので、国の補助金も入るとのことでした。

春日井市内では完全ボランティアで

 市内にも「無料塾」の取り組みがあります。 名古屋市の無料塾が、市の事業として枠組みが確立されているのに対し、「きみいろ」はすべてがボランティア、手弁当での実施です。自分たちで、チラシを作り、ポスティングをして、参加の子どもたちを募って実施しています。学習サポートに当たっているのは、中部大学の学生さんと、一部地域の大人です。

 通っている子どもたちは、名古屋と同じく、就学援助受給世帯、生活保護世帯、ひとり親世帯など経済的困難を抱える家庭の中学生です。ちらも見学させていただきましたが、ここでも、子どもたちが、もくもくと勉強する姿がありました。

 先生からは、この事業は本当に今求められているし、続けていきたい。持続できるように、少しでもいいから支援が欲しいという思いをお聞きしました。

 春日井市においても市の事業として「無料塾」を位置付けるよう求めました。

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