活動日誌−伊藤けんじ

【16.09.26】ディスレクシア(読み書き困難)への対応を

文字だけが識別できない障がい

 ディスレクシア、読み書き困難とは、文字の読み書きがうまくできない障がいを意味します。学習障がい(LD)の一種で、 失読症、難読症、識字障がい、読字障がいともいわれます。知的な障がいは伴わず、視覚・聴覚の器官の異常も無いものの、脳機能の一部に障がいがあり、文字だけが上手く認識できません。

 発症率は欧米では10%から15%と言われていますが、日本ではディスレクシアについての正確なデータがなく、文部科学省が行った調査では、読む、書く、計算など特定の分野の学習に困難を示す学習障害(LD)の可能性があるのは4.5%とされ、ここにディスレクシアも該当してくるのではないかとのこと。これらから、クラスに1人から2人は、困難を抱えた子どもがいるということになります。

周囲も本人も気が付きにくい障がい

 ディスレクシアは、知的な障がいを伴わないので、幼少期の発達段階では問題が生じません。言葉も正しく使え、コミュニケーションもとれ、知識も理解能力も身についていきます。

 しかし小学校にあがり、文字の習得がスタートすると困難に直面します。ディスクレシアの文字認識の困難さは人によって異なりますが、文字がにじむ・ぼやける、文字がゆがむ、逆さ文字(鏡文字)になるなど、文字そのものが上手く認識できません。書くことも困難になる場合も多いとのこと。文章の読解はさらに困難で、読み飛ばし、勝手読みをしてしまう。つっかえ、つっかえでたどたどしくしか読めない。そのため、文章の内容を理解することも困難になってしまいます。学校の授業は、すべての教科で文字を使って進められますが、文字が認識できないがために、やがて授業にもついていけなくなります。

 ディスレクシアは、外からは困難を抱えていることが分かりづらく、そのため周囲の理解も得られず、不自由さを抱えたまま、様々な場面で苦しむことになります。

 勉強についていけないのは、努力が足りないからだ、やる気がない、まじめにやれと常に叱咤されてしまう。視力が悪いから文字が良く見えないと勘違いされて、必要のない度の強いメガネをかけさせられたという事例もあるとのこと。また、本人自身も障がいであることに気がつきにくく、ディスレクシアの多くが、こうした困難さから不登校になっているのではないかという指摘もあります。

 これらの事から、初等教育、特に小学校低学年時にディスレクシアを見つけて適切にサポートすることが重要です。

早期の発見と適切なサポート

 ディスレクシアは、話したり遊んだり、一緒に過ごしていても、外見からは困難を抱えていることは全く分かりません。学校の授業でも言葉で説明されたことは理解し、記憶し、先生の問いかけにもきちんと答えることができます。

 字を読んだり書いたりが、まったくできないわけでもないので、ここで周囲の誤解が生じます。文字に興味を持てない様子から、勉強をさぼっているように見えたり、学校の授業の音読の時だけしどろもどろになり、「ほら、授業をちゃんと聞いていないからだぞ」と誤解を受けたり。字が上手に書けないことを、真面目に取り組んでいないと言われたりします。困難を抱えた本人も、なぜ自分がほかの子と同じようにできないのか分からず、苦しみます。

 大事なのは、いかに早く、周りがディスレクシアに気づけるかです。

 以前、発達障がいの子どもたちをサポートしている会で、そこに参加しているお母さんから次のような話を聞いたことがあります。「どうしてこの子は、周りの子とうまくやれないのかと、親も本人もずっと悩んでした。障がいによるものだとわかったときに、自分が悪い人間だからじゃないんだと思い、ホッとした」とのことです。

 ディスレクシアについても同じように、気づくことさえできれば、「自分が悪いわけじゃない、頭が悪いわけでも、努力が足りないわけでもない」と思えるのではないか。そして、そこから、次のステップに進むことができます。

 文字だけが上手く認識できないというハンディさえ別の方法で克服できれば、知識も理解力も問題なく身に付き、他の子と同じように能力を伸ばすことができます。適切なサポートさえあれば、普通にほかの子どもと学校生活を送れます。

 困難の度合いや特徴は個人差があますが、文字の大きな教材を使用したり、色で強調したり、タブレット端末を使うなど、その子にあったサポートをすれば、授業にもついていけます。試験の時にも、問題を読み上げるなど音声で補強したり、文字を書く困難さに合わせて時間を長くするなどの合理的な配慮をすれば、他の子どもと同じ内容の試験にも取り組むことができます。

教育現場でのサポート体制の確立を

 その役割は、まずは教育現場の先生に担っていただくことになります。

 現時点では、まだ広く認知されている障がいではなく、現場の先生でも知らない人が多いとのこと。現場の先生方に、ディスレクシアについての正しい知識を身に着けていただくための手立てを取ること、サポートは専門的なチームを組んで、現場教師と連携して取り組むよう求めました。

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