活動日誌−伊藤けんじ議員団より

【16.01.12】岐阜県御嵩町における亜炭鉱跡の埋戻し事業

亜炭鉱跡の埋戻し工事を視察しました

 岐阜県御嵩町では、現在、亜炭鉱跡の空洞の埋戻し工事が実施されており、現場視察をいたしました。事業内容は、2014年からの3か年で、南海トラフ巨大地震亜炭鉱跡防災モデル事業(国と県が実施)として、事業総額(基金総額)44億4444万円(国9/10、県1/9)で、空洞率が高く、陥没の危険性が高い箇所(住宅地など)を限定的に埋め戻すものです。

 御嵩町は最盛期には100社近い亜炭の採掘会社があり、無秩序に掘削されていたとのこと。そのため、空洞の分布も広範に及んでいます。陥没事故は年間5〜6回程度は起きるとのこと。とりわけ今回の事業地域は空洞率が70%とのことで、差し迫っての対応が求められていました。

 御嵩町はかねてから早稲田大学の協力を得てハザードマップの作成をし、また古洞図(フルトウズ)などの資料もあり、対策の必要な地域が前もって特定されていたことも、この事業が実施できた条件となっています。

 44億円もの事業費でありながら、対策出来る面積は7ヘクタール程度と決して広くありません。このことから自治体の単独事業での埋戻し工事は困難で、国の支援が必須と感じるものです。

 充填工事の技術(トビシマ式充填工法)は、素晴らしいもので、極めて正確に的確な埋戻し工事が可能です。空洞内に堰を作って、限定された場所だけを埋め戻す技術により、危険度が高い場所にのみ実施できるため、フレキシブルな対応が可能です。

事業概要

○南海トラフ巨大地震亜炭鉱跡防災モデル事業(国と県が実施)として実施
○事業総額(基金総額)44億4444万円(国9/10、県1/9)
○計画期間 2014年(平成26)3月〜2017年(平成29)3月
 地盤の脆弱性が極めて高いと判断された場所において防災工事を実施する。
  →具体的には空洞の埋戻し工事。
  現在は第2計画区の工事が実施されている。

事業計画

 

空洞の分布状況と状況

埋戻し対象箇所における空洞率は70%とのこと。
空洞深度は5mから25mの範囲。空洞高(空洞の底から天井まで)1〜2m
 ○第1期計画地区の空洞は地下水が満たされていた。
 ○第2期計画地区は、水は半分ほど入っていた。

工事方法(トビシマ式充填工法)

 空洞が広範に分布している場所において、特定の場所だけを充填する工法。
流動性の高い充填剤を意図した場所にだけ充填させるために、予定地境界部分に「端部充填剤」にて堰を作り、区切られた空間を作り出したのちに、全体を「中詰充填剤」にて充填する。

1、充填剤

 現場に設置したプラントで流体の充填剤を作り、パイプラインで圧送し、空洞に突き刺したパイプから注入する。注入口は8m間隔で設けているが、上に建物等があり上から真っ直ぐ打ち込めない箇所は斜めに設けて対応している。

 

 

 

 ↑端部充填剤は固化が早く、粘度の高い充填剤で、充填現場まで2本のパイプラインで原材料を送り、充填直前に混ぜ合わせる。A液B液を混ぜ合わせて固化した様子。
中詰充填剤は流動性が高い充填剤で、プラントで作ったものを現場まで圧送する。

 

 

 ↑充填箇所から試験掘削(確認ボーリング)にて取り出した充填剤。固化が完了した状態でも、柔軟性のある土や粘土のような状態。将来の土地利用の支障にはならない。

2、充填方法

 キラ材(粒子の細かい土砂、建設汚水の脱水ケーキ)と、水や凝固剤などは、現場に設けたプラントで生成し、充填箇所までパイプラインで送る。

 

 

↑プラント全景、右写真:右側の四角い部分でキラ材を細かく砕く。円柱状のタンクは、固化材のサイロ。

 

 ショベルカーの下にあるのが充填剤の材料であるキラ材。

 

 

↑プラントから圧送するポンプ、住宅街に張り巡らされたパイプ。

 

 

↑一般住宅敷地内で実施されていた充てん作業。圧力計にて進捗を確認しながらの作業。充填が完了に近づくと充填孔部分で、押し戻しの圧力が生ずる。そのモニタリングを行いながら慎重に行う。

 

 

↑充填剤を入れすぎによる地盤の隆起を防ぐための傾斜計、モニター画面(別の場所にてモニタリング)

 精度は、日中太陽の暖めによりコンクリートが膨張する程度の傾斜まで測定できるもの。建物がない場所ならば、別の充填孔から噴き出すまで注入をすればいいが、建物がある個所では充填剤の入れすぎによる隆起で建物を傷めてしまうので、大変神経を使うとのこと。

 第2期計画地区における充填孔の数
  端部充填孔   135箇所
  端部充填孔(斜堀)154箇所
  中詰充填子   129箇所
  中詰充填孔(斜堀) 15箇所
 計        433箇所

 他
 観測孔      4箇所
 確認孔      25箇所

 充填孔は8m間隔で設置されており、これは事前の空洞調査のためのボーリングによって開けられた穴をそのまま使っている。

所感

 かつて、春日井市が高蔵寺町で2カ年にわたり充填工事を実施したことがありましたが、空洞内にひたすら充填剤を入れるだけの作業で、充填の効果を正確に把握できないまま完了していることを思うと、隔世の感があります。

 長久手市の区画整理事業における亜炭鉱の埋戻し(2011年〜2013年、飛島建設が実施)を視察させていただいたことがありましたが、こちらは12.8ヘクタール、空洞率40%のを13億円で行っています。長久手市では12.8ヘクタールが一団の面積で、建物のない更地に対して実施しているのに対し、御嵩町は住宅地であり、また対象区域を細かく区切って実施しているために単価が高くなっていると思われます。

 春日井市において、このような工事が必要かどうかは、今後しっかりと見極めが必要だと思います。春日井市において空洞深度が浅く、住宅地への影響が懸念される場所もありますが、分布状況を正確に把握するに至っていません。今後、陥没事故たびたび起きるようであれば、まずは正確な空洞の分布調査が必要だと思います。その前段となる情報収集を引き続き、地域の人の力も借りながら進めていき、適宜、市に提案も行っていきたいと思います。

 でも、空洞があっても、ちゃんと埋戻しもできます。すごいんですよ、日本の土木技術は。そのレベルの高さに感動した視察でした。

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